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春を嫌いになった理由

誉田 哲也の新しい文庫『春を嫌いになった理由』。
この作家は警察小説というイメージが強いが、『武士道シックスティーン』を見てもわかるようにそのジャンルは広い。今回は珍しいホラーサスペンスだが、彼のデビュー作がホラーだったことを考えるとこういったジャンルは実は好きなのだろう。

物語は主人公の瑞希と中国からの密入国者、さらにもう1人主人公の関わってるテレビ番組を茶の間で見てるらしき視聴者の男性、一見無関係な3つのストーリーがカットバックしながら進んでいく。ギャグ交じりの主人公側のノリと、かなりシリアスな密入国者の展開、時折出てくる視聴者の妻とのやり取り、これらが一体どこで関わっていくのか謎が最後まで読者を引き込んでいく。
この謎解きのほうは途中からなんとなく予想がつくのだが、主人公のトラウマに関する謎解きが「そうくるか!」ってちょっと反則っぽい展開…… まぁ、だからホラーなのだが。

超能力者により事件を解決するという主人公の叔母がプロデューサーをつとめる架空の番組が舞台となっているが、下敷きにされているのは実在の『テレビのちから』という番組。国外活動を禁止されているはずのFBIで捜査官をやってるとかいう超能力者とかで出てきて、怪しさ満載で批判も多い番組だった。そんな番組をモチーフに当時即座取り込んで作品を書き上げていたとは、やはりこの作者ただ者ではない。

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リピート

Appling 2ndの『リピート』 の記事を読んで、面白そうだったので買って読んでみた。 リピート posted with amazlet on 07.04.01 乾 くるみ 文藝春秋 (2004/10/23) 売り上げランキング: 194098 Amazon.co.jp で詳細を見る そもそもタイムスリップものは好きなジャンルであることと、そのタイトルと紹介されていたストーリーから大好きなケン・グリムウッドの『リプレイ』を連想したからだ。実際、作品の中でも時間を繰り返すタイムスリップを突きつけられた時主人公達はケン・グリムウッドの『リプレイ』を引き合いに出して議論を行う場面もあるので、作者がリプレイを意識しているのは確実だろう。 タイムスリップ物というSF的な文法を使いながら、うまくミステリーの要素を融合させ、ちょっぴり恋愛物のスパイスも利かせてうまい具合にまとまった作品になっている。たまたま今回は筋が読めてしまって「やっぱり」って感じもしたが、一般的には二つの要素がかみ合ってうまく最後まで読者を惹きつけるだろう。 帯には" 『リプレイ』+『そして誰もいなくなった』 "などと銘打ってある。確かに楽しめる作品であるが、ちょっと言いすぎかな。『リプレイ』のオマージュと考えると、以下の点で物足りなさを感じる。 リプレイ(リピート)の期間が短い 『リプレイ』では25年だったリプレイの期間がわずか10ヶ月を遡るだけ。このことで「人生を繰り返す」といっても重みが違ってきている。しかも描かれるのはそのあるサイクルだけだ。 描写される時代 『リプレイ』では自信を失っていた80年代のアメリカから良き時代の60年代、70年代がリプレイで描かれるところが大きな魅力になっている。一方『リピート』では振幅が短いためリピート自体にそういった効果はないが、何故かそもそもの設定は91年となっていて中途半端に懐かしい。 主人公が嫌なヤツ 最初は好青年っぽいがだんだん嫌な面が描かれていく。物語は一人称で綴られているが主人公がそんな状態であるため、読み手としては感情移入がし難い。 とはいえ、結構な長編だが一日で一気に読んでしまったほど面白い。

奇跡の自転車

奇跡の自転車 posted with amazlet on 07.04.07 ロン・マクラーティ 森田 義信 新潮社 (2006/08/30) 売り上げランキング: 100659 Amazon.co.jp で詳細を見る 一日で読んでしまった。もう速読に近い。 酒と煙草とジャンクフード、さえない仕事、体重126キロ、43歳の男に突然もたらされる、両親の事故死、続く20年前に失踪した心を病んだ姉の死。そして、自転車を漕ぎだす。 なかなか救いの無い人生、主人公もかなりアホウで不運だ。 けど、『フォレストガンプ/一期一会』を思い出した。映画化されるらしいので、よいロードムービーになろう。

PaSoRi

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