「薔薇色のキャンパスライフ」という言葉があるが、大学時代というのは、特に男子はこの言葉と現実の自分の学生生活のギャップに一度は思い悩むもの。
この物語は、同様におよそ有意義とは縁のない不毛な生活を送っている大学生の主人公が、入学当時に選択し得た映画サークル「みそぎ」、ソフトボールサークル「ほんわか」、「弟子求む」、秘密機関「福猫飯店」、それぞれ選択でどのような大学生活を送ったかを4つの短編として描いたもの。並行世界を描いたとも言える?
「薔薇色のキャンパスライフ」を夢見る主人公は、結局どの選択においても悪の親友「小津」に汚染され、師匠に振り回され、不毛なドタバタを繰り返すと言う結果が待っているのだが。
師匠が吐いた「可能性という言葉を無限定に使ってはならない。我々という存在を規定するのは、我々が持つ可能性ではなく、我々が持つ不可能性である」という台詞はこの小説のテーマをよく表していると言える。主人公と「小津」を思うとき、「こうではなかった自分」を夢想するのがどれほどで無駄であるか、思い至るでしょう。「こうでしかありえなかった自分」を謙虚に受け入れさえすれば、糞の様な退屈な仕事は楽しい黄金のゲームとなり、腐れ縁は一生の友となる。
この小説には作中に出てくる「明石さん」の台詞がふさわしいでしょう。
「また阿呆なもの作りましたね」
コメント
コメントを投稿