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万年筆の達人

本書は、近い将来日本の万年筆の文化を記録した歴史的な資料になるだろう。

万年筆の達人万年筆の達人
古山 浩一

〓@53B2@出版社 2006-03
売り上げランキング : 68174
おすすめ平均

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古山氏の万年筆にかかわる本は、97年末に自費出版された『4本のヘミングウェイ』が最初だろう。万年筆で描いた万年筆のデッサン画とともに万年筆職人の方の貴重なインタビューが収めてあり読んでいても楽しいものだった。その後内容を拡充してグリーンアロー社から単行本として『4本のヘミングウェイ』が2000年に出版される。不幸なことにわたしはこの本を買いそびれてしまった。そして気付けば絶版になっており、古本でもなかなか出回っていない状況が続いていた。そんな中古山氏のサイトで改訂版の出版の予定があることを昨年知って楽しみにしていた。ところが、

ところが出版元のグリーンアロー社の出版事情の悪化により4月26日に出版無期延期の通達を受けました。

その後、すっかりこの本のことを忘れていたが、今年のなってこの幻の『完全版4本のヘミングウェイ』が『万年筆の達人』として出版されたことをフルハルターのWebサイトで知った。さらに内容も充実し、古山氏のイラストも素晴らしく、万年筆ファンならずとも手に取って読んで欲しい本である。

この本を読むまで、工業技術などというものは線形に進化しているのだから工業製品に関しては過去の製品よりも新しいもののほうが優れていて当たり前だと思っていた。しかし、こと万年筆に限っては、万年筆の黄金期である50年代や60年代のものが現代で復刻することが難しいことがわかる。それは需要と供給ののバランスに起因するコストの問題であったり原料の入手の問題ももちろんあるけれど、それ以上に万年筆職人と呼ばれる人たちが当時自らの経験と腕により実現していた技術が失われ現代の技術でもってしても再現できないことが大きい。この本は数少ない現代に残る万年筆職人たちの貴重なインタビューで、華やかな当時の事情といかにそういった人に支えられた技術が素晴らしいかを教えてくれる。

また、この本では職人やメーカーの方だけでなくコレクターの方の話も収録されている。
その中の森睦さんという方の紹介。なんだか聞いたことがある名前だ……、写真を見て「あっ」と驚いた。わたしが入社当時に同じ部門にいた方だった。当時はダンディーでスマートな方だったので、万年筆に趣味を置くような方に見えなかった。多分森さん自身はわたしのことを覚えていまいが、その方がその後リーダーをされていたチームをこの3月までわたしが担当していた。また、一昨年うちの部門でリモートの会議システムを購入したのだが、その時当初の交渉でお話を伺ったのが転職されてそのメーカーの偉いさんになっておられた森さんであった。
そして、ハンドル名をみてまたまた驚く。「たこ吉」……90年代前半、ちょうど万年筆に凝り出したころNiftyServeの万年筆のコミュニティでよくお見かけしたハンドル名、何度かやり取りもしたことがあるはず。あれは森さんだった。

4本のヘミングウェイ―実録・万年筆物語4本のヘミングウェイ―実録・万年筆物語
古山 浩一

グリーンアロー出版社 2000-02
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(reference)
町工場二階空目薬煙突工房
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