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死ぬことと見つけたり

隆 慶一郎の遺作『死ぬことと見つけたり』を久しぶりに読んだ。

死ぬことと見つけたり〈下〉 (新潮文庫)
隆 慶一郎
新潮社 (1994/08)
売り上げランキング: 31979
おすすめ度の平均: 5.0
5 未完でも名作
5 佐賀に鍋島武士あり
4 うらやましい

あの『葉隠』から、よくもまぁこんな痛快な物語を編み出したものだと今さらながら感心する。 葉隠をベースに江戸初期の鍋島藩を舞台に浪人斉藤杢之助の活躍を描いた物である。

隆 慶一郎といえば、『影武者徳川家康』などで代表されるよう網野史学を下敷きに自由民、職能民(道々の者)と体制、権力者との戦いを描くというのが得意とする作風である。

この作品もやはりこれから本格的に江戸幕府の体制に移行する時期に、ある種の職能民「いくさ人」である斉藤杢之助、中野一馬、鍋島直茂らが、体制側である鍋島勝茂、老中松平信綱らとの戦いが描かれている。そして、彼らのいくさ人としての苛烈さが姑息な体制側との対比で鮮明となり隆慶一郎の本領である痛快な時代劇に仕上がっている。

ただ、どの作品においても、最初は痛快であるが後半は必然として時代が体制側へと流れていき、主人公たちはある種の悲しみを纏うことになる。どの主人公もその悲しみを笑い飛ばす奔放さを持つため、爽やかな読後の印象につながる。残念ながら、この作品は作者の逝去により未完に終わっているが、解説に示されてる斉藤杢之助などの最後を読むと、『影武者徳川家康』などと同様素晴らしい作品に仕上がっていただろうと思わせる。

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