グラスホッパー (角川文庫) | |
伊坂 幸太郎 角川書店 2007-06 売り上げランキング : 1028 おすすめ平均 奇妙な現実感。 死者の言葉 最後の1行を読んだ時、もう一度読み返したくなりました Amazonで詳しく見る by G-Tools |
書店で見かけて、タイトルが気になって手に取ってそのまま購入してしまった。「グラスホッパー」というのは、銀座のバーをはしごするような人を指す言葉らしい……というのを知っていたからだが、この本では全く関係ない。バッタを指す言葉だ。バッタは、一定以上に個体の密度が多くなると体の色が変わり凶暴になるそうだ。それに掛けてあるタイトルだ。
妻の復讐を図る元教師・鈴木、依頼により他人を自殺させる自殺屋・鯨、殺し屋・蝉を中心に、押し屋や殺しの仲介屋など個性あふれるキャラクターたちが、一見脈絡なく始まったある殺しをきっかけとして絡み合いながらなんとも結末につながっていく展開は、なんだか作者に「やられた!」という感じで見事。
知らない作家だったが、丁寧につむがれた伏線には驚かされた.会話や言葉のひとつひとつに意図と伏線が隠されているような緻密さ。それでいて会話としてシリアスさ、怖さ、そしてどこかユーモラスな感覚が伝わってくる。実際には、絶望的に暗いストーリーのはずだが、会話の妙でコメディかと思うユーモアが漂う。ただ、実はその裏に怖さや、悲しみが隠れているところに作者の並々ならぬ力量を感じる。
久しぶりに、大当たり。
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