文房具フリークらしい片岡義男氏の文房具の本。片岡義男氏と言えば『スローなブギにしてくれ』などで著名な作家で、特に私の世代の方は少年の頃大人に憧れてよく読んだ思い入れのある小説家だ。こういった本を出しているとはちょっと意外だった。
内容は文房具をひたすらオリンパスの一眼レフに50mmレンズで撮った写真と、その文房具にまつわる思い入れやエッセイをつづったもの。中には、愛用している訳ではなく写真のために集めてきたものもあるらしいので、本格的な文房具マニアにはちょっとポイントをはずされた感があるかも知れない。
しかし、さすがに選ばれた文房具は鋭い。ほとんどが海外製のものばかりでモールスキンのノートやロディアのメモなど最近密かに人気なものから、聞いたこともない輪ゴムやピンまでカバーしている節操のなさ。だが、道具として独特の美しさを醸し出しているものばかりで、何でもないステーショナリーなのになんだかとてもおしゃれを感じる。この辺に少年の頃憧れたこの作家の感性が伺われる。写真だけ見ていても時間を立つのを忘れるほど楽しいし、文章もうんちくではなくそれぞれの道具に対するこだわりであったり、思い出であったり……、本当に文房具に対する愛を感じるエッセイに仕上がっている。
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