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電脳日本語論

コンピュータ、言語学、辞書学など各方面の専門家が集いATOKの成功と発展を裏で支えるATOK監修委員会。この委員会の取材を中心に構成されたATOKの歴史を集大成したドキュメンタリーだ。

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電脳日本語論
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篠原 一
作品社
売り上げランキング: 521180
おすすめ度の平均: 3.0
3 今までの篠原一だと思ったら寝首をかかれた。

小説家 篠原一の手によるドキュメンタリーだが、小説家としての彼女からは想像できない作品で少し驚いた。文体も非常に男性的だし、テクニカルな内容も適切にまとまっている。DOS時代のFEPのような話題も押さえており、文章からもご自身のテクニカルな指向が付け焼き刃でないことが感じられる。

本書は、当初「ASCII」での連載として執筆され単行本にまとめられたものである。この連載自体を目にしたことはないが、内容からすると1999年前後ではないかと思う。語られているのはATOK13くらいまでだが、MS-IMEに多くのIMEが駆逐され消えていく中ATOKだけが生き残っている現在の状況が単なる幸運ではなく、ジャストシステムによるこれらの日本語への挑戦ともいえる取り組みの成果であることがよくわかる。

こういった取り組みはなかなか表に出て我々ユーザが知るチャンスを得ることが少ない。
本書を直接の当事者へのインタビューで押さえた上で小説家らしい日本語へのこだわりについての共感と深い洞察からATOKが生まれ育ってきた歴史をドキュメンタリーとして成立させた貴重な良書である。

ちょっと思い出話を。

ATOKというものを最初に意識したのはもう20年以上前だろうか。
「BUG NEWS」というちょっとラディカルなパソコン雑誌があったが、その中の特集で「一太郎4」が取り上げられたときだった。当時一太郎4が発表された直後でNECのPC-9801と一太郎という組み合わせが典型的なユーザのパターンになりつつあった頃だと思う。
当時まだ8ビットのパソコンで熟語変換で喜んでいた私は、ディスク4枚で供給される一太郎というシステムにあこがれたものだった。

その後、DOS/V機が一部のマニアで話題となっていた頃マニアの仲間入りをした。
同時にIBMの仮名漢字変換プログラムに耐えられずにWXIIを購入した。当時のWXIIはFEP単品で勝負している数少ない製品だったし、640KBという限られたメモリ空間しか扱えないDOS環境で非常に効率的なFEPだった。当時のATOKはメモリ効率が悪く、640KBより上のEMSやUMBにうまくドライバーを追いやることができなかったのでこだわりのあるDOS/Vユーザには敬遠されていた。

Windowsに移行してしばらくはWXIIの後継を使っていた。が、段々こちらの製品もおかしくなっていった。見回したときには、まともなIMEはATOKしかなかった。ATOK10だったと思う。以来、ATOKユーザーだ。

現在はMacでEGBRIDGEに時々浮気しながらも基本的にはATOKユーザである。
EGBRIDGEが不必要に漢字に変換される印象があるのに比べると、ATOKやはり変換される文章が自然な日本語の感覚に近いことを感じる。これはもう単に変換アルゴリズムとかだけの問題ではなく、こういった辞書学や言語学への取り組みとそこから導き出された語彙空間を反映した辞書によるところが大きいのだろう……と本書を読んで改めて思った。

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