有加という女性が大女優であった祖母との関わりを少女時代から祖母の死までを追想の形で書かれた物語。あくまで有加の視点で彼女の聞いたことだけが語られていく語り口と登場人物のからりとした生き様で切ない内容ながら読後はとても浄化されて清々しい気分になる。
現代では同居する家族が減ってきているので、親以外の大人、特に老人と触れあったり話したりする機会が限られている。わたしは身近に祖母が同居していたのでこの物語の雰囲気はとっても懐かしく思われる。祖母との関係は当然親とのそれとも違ったし、特に大人との触れ合いを避けたくなる思春期にある種大人でない特殊な大人としてつきあえた気がする。
そして、老いと病からは、どこかで弱っていく姿を見ることになり「やがて目覚めない朝」を迎えることになる。命の重みを周りにぶつけるように主張する大人は多い中、どこかで迎えなければならない死を受け入れ、自身の生きた証も他人の中に求めず、静かに老いと死を見つめつつ、それでも淡々と生きている老人の中にある種の美しさを見る。そして、子供時代に見えたことは「生きること」がより大事に思え、自分もそういう大人でありたいと願うようになれた。
そういうことを思い出させてくれる本だった。
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