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ベルカ、吠えないのか

知らない作家だったが、タイトルが気になって購入した古川日出男著『ベルカ、吠えないのか?』。

ベルカ、吠えないのか?
古川 日出男
文藝春秋
売り上げランキング: 91483
おすすめ度の平均: 4.0
4 疾走する言葉,時代の奔流をいく
5 犬言葉にはまります。
5 好きな作品です。
2 結構言うほどでも……
5 なんなんだこの凄さ。
戦時中、日本軍に取り残された四頭の軍用犬から始まり、ロシア、南北アメリカ、東南アジアと殖え広がっていったその裔のイヌ達を通して、二次大戦、朝鮮、ベトナム、アフガン、そんな二十世紀後半を描く。そこにソ連崩壊の中、犬を率いる「大主教」と呼ばれる老人と少女の物語を重ね合わせ見事にフィクッションとして成立させたなかなか見事な作品。

 イヌが様々な状況、人間に翻弄されながら、生き延び、殖え、絶えて、世代を重ねて犬の歴史が紡がれていく。それがイヌの視点で語られる、イヌへの語りかけで語られる。時にイヌ自身にはわからぬ因果でイヌの裔たちはその数奇な運命を交差させていく、まさにイヌの現代史。

ただ、イヌの歴史の歴史の部分は時に名前がこんがらがって冗長で退屈な場面も。
しかし、並行して描かれる現代(といっても90年代?)の老人と少女とイヌ達の物語が物語全体への期待感を持たせてくれる。冷徹なその老人や少女も、実はイヌ同様に時代に翻弄される「イヌ」、不器用に、精一杯に、そして悲しく生きている。

 「イヌ」という新しい視点で二十世紀を振り返るその知識量はすごい、取材は大変だったろう。なおかつそれをエンターテインメントとしても成立させてしまうこの作家の力量もすごい。個人的には「大主教」のじじいに大いに感銘。

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