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百器徒然袋ー風

生まれながらの榎木津礼次郎を主役とした百器徒然袋シリーズの第2弾『百器徒然袋ー風』。
本編ともいえる『百鬼夜行』シリーズと比べると、短編集となっていることと主役が榎木津であることから、ずいぶんと読みやすいシリーズとなっている。京極夏彦氏のページ数に圧倒されてしまう初心者にはちょうどよいやも知れぬ。

百器徒然袋−風(講談社ノベルス)
京極夏彦著

出版社 講談社
発売日 20040705
価格  ¥ 1,365(¥ 1,300)
ISBN  4061823795

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このシリーズも本編同様妖怪をモチーフにとしその妖怪のなす怪異現象を物語のストーリーの伏線としつつ、謎を解き明かしていく過程が非常に楽しい。本書の妖怪は「五徳猫」「雲外鏡」「面霊気」。本編に比べると短編であるため、やや食い足りない感じはするが、その分は主役が敵を「殲滅」していく痛快さで本編とは異なる読み応えあるシリーズとなっている。

今回は、本島俊夫という電気技師の目を通して、彼の語りで物語が進んでいく。これは、このシリーズでは新しい試みであろうか。この電気技師は、本編か本シリーズに以前脇役としてでていた節があるが、全く思い出せない。本当に脇役だっただろう。この徹底的な一般人を通して見た「榎木津一味」のもある面々の一癖も二癖もあるありようが異様なおかしさを醸し出している。本書における関口の役所であろうが、彼のような陰気さがないのがこのコミカルさに通じている。

 「五徳猫」では招き猫の手の上げ方の由来についてのうんちくが語られるが、これがやはり鍵となる。
「雲外鏡」は、100年以上たった古鏡の妖怪になり 鏡の中に怪しい顔を移すという。適役の神無月が持つ鏡のことだが、よく考えると神無月が犯した重大な失敗のことの伏線とも、果ては榎木津自身を暗示しているともとれる。深い……
「面霊気」はストーリー通して一応「面」にこだわった作品。最後に見える榎木津の意外な一「面」も注目だし、今回初めて「面」が割れる榎木津の父親も楽しみなポイントだろう。

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